平安物語=短編集=【完】
十日後、なるべく地味を心掛けたのであろう数台の牛車が、その甲斐なく多数の人々に付き従われて賑々しく参内した。
私の前にいた右大臣は、その派手な気配に、
「これはまた、帝におかれましては、新しくお妃をお迎えになりましたのか?」
と、冗談混じりに皮肉った。
「まあ、まあ。
そなたの姫は、徒で参内しても人目を引いてしまうような美貌なのだろう?」
そうなだめると、
「ええ、まあ。
悪い虫を払うのに苦心しておりますよ。」
とにっこり微笑み、周りの者達も笑った。
「それはまた。
いっそ私が貰おうか。」
右大臣の親馬鹿を分かっていてそうからかうと、
「ありがたい御言葉なれど、姫は年下のお方に嫁いでこその娘なのです。
きっと、お人形のように可愛らしい御夫婦になりましょう。」
と、軽くかわされた。