平安物語=短編集=【完】
「……かど…、帝…」
優しく揺り動かされて目を開くと、女房が私を起こしたのだった。
「このような所でお休みになっては、お体に障ります。
もう秋風も吹いておりますのに…」
そっと、着物をかけてくれた。
「今日は中秋の名月ですが、どなたをお召しになりますか?」
――中秋の名月…
今年は、兄院がお風邪を召して養生中のため、内裏での宴は無い。
そういえば昔、一度だけ更衣と過ごせたことがあった…
一人の女御は物忌み、もう一人は月の障りで。
「…今日は、誰も。」
更衣を想いながら、一人で過ごそう…