平安物語=短編集=【完】
秋の陽は釣瓶落としとはよく言ったもので、そんなに眠ったつもりはないのにもう辺りは暗くなっていた。
柿など食べていると、月が上ってくる。
気心の知れた女房を数人いさせて世間話などして過ごし、夜が更けた頃、全員下がらせた。
そっと部屋から出て、簀に立って月を眺める。
亡き更衣は、満月を見ると
「何やら恐れ多い気がして…」
と私の服を掴んできたものだった。
そのくせ満月の絵が大好きで、そのような扇を贈ったら、大喜びして抱きついてきた。
味を占めて、満月の描いた屏風を贈ったところ、持って来て
「私一人ではもったいなくて。」
と、私の部屋に置いて眺めていた。
かぐや姫の絵巻物を見せてやると、しくしくと涙を流して
「かぐや姫は、本当は帝をお慕いしていらしたのに、ご自分の立場を考えて遠慮なさったのですね。」
と言った。