平安物語=短編集=【完】
次の夜は、登華殿女御を待っていた。
いつになく美しく着飾った女御を見、
「こんばんは。
なんだか、今日は一段と美しいですね。
一日のうちに何かあったのですか?」
と微笑みながら言うと、女御は
「さあ…それでは、嫉妬は女人を綺麗にするということなのでしょうか…」
と言って、私の胸にすり寄って来た。
「え…」
いつもツンとしていた女御の思いがけない変化に、一時思考が止まるとともに、今までになく鼓動が早なった。
これは、どうしたことだ。
女御の顔を覗き込んで
「あなたが嫉妬だなんて、初めてのことではありませんか。
どうしたのです?」
と問うと、女御は黙ったまま微笑んで顔を背けた。
なんだ、どうしてこんなに動揺するのだ。
まるで、かつて更衣に抱いていた感情のように…
更衣の身代わりと思っていたはずの、この女御なのに
自分の感情の変化に、ひどく動揺していた。