平安物語=短編集=【完】
しかし、譲位して院となり気楽に思ったのが幸いしたのか、呆気ないくらいに病気が快方に向かっていった。
全快して、ついていてくれた藤壺に微笑みかけると、藤壺は嬉し涙にむせんでいた。
藤壺は、私が病気の間ずっと、嫌な顔一つせずに看病し続けてくれていた。
「私のために泣いてくれていらっしゃるのですか?
心配をおかけしました。
これからは心のどやかに過ごしましょう。」
と言うと、藤壺は涙ながらに何度も何度も頷いた。