平安物語=短編集=【完】
回復して登華殿に逢うと、登華殿も涙を堪えきれないようだった。
「私…どうしようかと…」
口元を覆って、嗚咽混じりにそう言う女御が本当に愛しかった。
「心配をかけて申し訳ありませんでした。
まだ若いあなたを置いてはいけなくて。」
そう言ってひしと抱きしめた。
「勿論ですわ。
一回り二回りもも若い私を望まれたのですもの、まだまだ長生きして頂かなくては。」
涙が光る顔で、にっこりと微笑んだ。