平安物語=短編集=【完】
「お母さまぁーっ」
ついにべそをかき始めてしまわれたのをご覧になって、中宮様がにじり寄られ、
「あなた、宮が嫌がっていますわ。」
と仰って宮様を抱き取ってしまわれました。
「まあ、重い。
二カ月お会いしないうちに、大きくなられましたね。」
ほっそりとしたお体つきの中宮様はすぐに宮様を下ろしてしまわれるのですが、宮様は嬉しそうに母君にぴったりと寄り添っていらっしゃいます。
中宮様も、非常に愛おしいというように肩をお抱きになって、日々の様子などお尋ねになります。
そんな睦まじい御様子がお気に召さなかったのか、帝が急に立ち上がられました。