平安物語=短編集=【完】
宮中に着くと、私がお抱きするのも遅いとおむつがりなさって、小走りでお母上の御座所に向かわれます。
「お母さま!!」
と大声を出しながら御座所に入られた宮様の後ろを、弘徽殿のお方々に申し訳なく思いながら早足で追います。
やっと着いた時、宮様は、父帝の腕の中に収められていらっしゃいました。
「宮~、会いたかったぞ~!
父をちゃんと覚えているでしょうね?」
頬ずりして溺愛なさる父帝を宮様は嫌がって、母中宮のお膝に行こうともがいていらっしゃいます。
可笑しそうにお笑いになりながら、愛情のこもったお目で宮様をご覧になる中宮様は、やはり変わらないお美しさでいらっしゃいます。