平安物語=短編集=【完】
用意された御座所には、もう梅壺様母子がおいででした。
中宮様は、すぐさま女一の宮をお訪ねになります。
こちらもまたお揃いの御衣装で、どちらも柳の襲をお召しです。
爽やかで控え目な色合いは、更衣様にぴったりなのですが、まだまだあどけない女一の宮も、少し大人びたように見受けられます。
実際女一の宮も着慣れていらっしゃらないのか、少し恥ずかしそうにはにかんでいらっしゃる御様子は、格別にお可愛らしいです。
宮様もすぐに姉宮に近寄られて、
「姉宮の柳襲は初めて見ました。
なんだか大人のようになってしまわれて。」
と、しゅんとなさいます。
「久しぶりに中宮様のお目にかかるのですから、少しでも成長した御様子をお見せしようとしまして。
お人柄は、まだまだ子供っぽくていらっしゃいます。」
と更衣様が仰いますと、中宮様が
「いいえ、随分ご立派になられました。
お会い出来ずに参りました月日が惜しまれます。
それでも私の記憶の面影がおありですわ。」
と女一の宮のお手を取ってお喜びになりますと、女一の宮も
「なかなかお会い出来ず、寂しゅうございました。」
と嬉しそうに微笑まれました。