平安物語=短編集=【完】



ある時、まる一カ月お越しがないことがありました。

いよいよ飽きが来たかと物思いに沈んで、犬君とも遊ばないくらい塞ぎ込んでおりました。

すると小侍従が声をかけてきて、

「御方様、娘が遊んで頂きたいと恋しがっております。
どうしてそう塞ぎ込んでばかりいらっしゃるのですか?」

と言います。

私の気持ちを察してくれないことだと情けなくて、

「どうにも気分が悪くて。」

とだけ言うと、

「御方様は、御自分の御運をはかなく思っていらっしゃるのでしょうか。
畏れながら、御方様のような身で目も当てられないほど落ちぶれている方を存じております。
そのお方と比べましたら、何とお幸せな御身でしょう。
もう少し明るくお考えになってはいかがですか。」

と申します。

なんて煩いことをずけずけと言うのかと憎らしく思って、返事もせずにおりました。



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