平安物語=短編集=【完】



突然のお越しに、嬉しいでも憎いでもなく、ただ億劫だと感じている私がいました。

なるべく早くお引き取り頂きたいものだと思うのも、思えばなんという心境の変化でしょう。



…ああ、それなのに。


なに食わぬ落ち着き払った様子で入っていらっしゃるあなたは、本当に男盛りにお美しくて。

出家をしても惜しくないと思っていたのに、どうしたって離れられそうもないと苦しいのです。


『どうしてずっといらしてくださらなかったの。』
そんな言葉よりも、
『どうしていらしてしまわれたの。』
という恨み言を、泣き叫んで訴えたくなってしまうのでございます。



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