平安物語=短編集=【完】
「ああ、御息所。」
「失礼致します。
姫が御迷惑をおかけしませんでしたか?」
「いいえ、一度転んで泣いたりしましたが良い子でしたよ。
女御もとても喜んでいました。
ありがとう。」
にっこりと微笑んで、そう仰いました。
「あれ、その人形はなんです?」
ふと東宮様がお目を留めて仰いますので、
「先ほど、女御が姫にとくださいまして。」
と正直に申し上げました。
「きっと別れ難かったのですね。
本当に優しく姫を見ていらっしゃったから。
お手紙などは?」
「ええ…はい。
まだ拝読しておりませんが。」
「良かったら見せてくださいよ。
女御が私以外の人に書いた手紙とは、興味があります。」
ただただ無邪気に仰る東宮様を少し憎らしく思いながら、素直に差し出しました。