平安物語=短編集=【完】
東宮様は女御様からのお手紙をお手に取ってお読みになり、
「これはまた、よほどあなたと姫がお気に召したらしい。」
と嬉しそうに仰いました。
返して頂いて読ませて頂きますと、まずはしっとりとたきしめた香の素晴らしさに驚きました。
『紅梅の蕾める様のゆかしきは元の盛りのめでたきゆゑらむ』
内容は念入りな香とは対照的に、一首の歌だけがさらりと書き流してありました。
その御筆跡はいかにも上品で、だからと言って格式張っていない、柔らかなものです。
これだから、嫌なのです。
何を取っても素晴らしい女御様。
私なんて天地が逆転してもかなわない女御様。
その素晴らしさを見せつけられれば見せつけられるほど、私という女が情けなくて仕方ありません。