平安物語=短編集=【完】
そして、突然譲位がありました。
誰もが油断していたであろう何でもない日のことです。
帝の御前を下がって私を訪ねてくださっていた父上は、知らせを受け、顔色を変えて立ち去って行かれました。
小さく舌打ちしたのは、私にしか聞こえなかったことを祈ります。
帝は、父上をこの上なく重用してくださっていましたから、譲位となれば何かしら喜ばしくないのでしょう。
女房達もざわついていましたが、ここは東宮様の妃の御殿。
若干喜びの色が見えるのを、諫めることは出来ないでしょう。