平安物語=短編集=【完】
夜が更けてきた。
「では、これで失礼致します。
そこの者がご案内致しますので。」
と言って、父宮が席を立とうとした。
「父宮様。」
少し声を張って呼び止めた。
「お認め頂き、本当にありがとうございます。
紅葉の君ただお一人を、生涯大切に致します。」
これが、最後の駆け引き。
若干睨むくらいに目に力を込めて見つめる。
はっと息をのんだ父宮は、「…ええ。」とだけ言って去ってしまった。