平安物語=短編集=【完】
翌朝の宮様は、物憂げでなまめかしく、昨日までの宮様とは明らかに違っていらっしゃいました。
私の視線にもお気づきにならず、物思いに耽っていらっしゃいます。
宮様、と声をおかけすると、はっと我に帰られて頬を赤らめるのです。
「式部…」
こっそりとお側に呼ばれまして、何事かとお寄り致します。
「どうしましょう、私…
あの方の事を思うと、胸が詰まったようにモヤモヤするの。」
いかにも泣き出しそうにおっしゃる宮様の、お可愛らしいこと。
「宮様、それが恋でございますよ。」
宮様の想いに名前を付けて差し上げると、幾分御気分が楽になられたようでした。
「それではこれまでの私の想いなんて、ほんのお遊びだったのね。」
そうおっしゃって、ちょっとお笑いになりました。