平安物語=短編集=【完】
「そんなに素晴らしい方なのですか、中宮は。」
八才になる一人息子が問う。
今や私も右大臣となり、あの姫君は中宮で東宮の母となった。
「ああ。
御姿だけでなく、御心も澄み切った素晴らしい御方だ。」
思い出話など聞かせてしまったが、息子は随分と興味を持ったようだ。
「じゃあ私は、中宮みたいな人と結婚したいです!」
「はは、そうだな。
中宮には異腹の妹君がいらっしゃるが…中宮に似ておいでだろうか。
お前が大人になって惹かれるようなら、結婚を申し込めば良い。」
その妹君も、まだ若干三歳だが…と内心おかしく思った。
しかし息子は、目をキラキラさせて「はい!」と言う。
この子の将来がどうなるのか…見届けたいものだ。
中宮が国母となったこの国に、誠心誠意仕えながら――。
― 宰相中将 ―