平安物語=短編集=【完】



「お母様の、その新しいお召し物もすごくお綺麗です。
お兄様がお喜びになりますね。」

この姫宮は、皇太后様を母とお呼びになりますが、院のことは兄とお呼びになります。

確かに実のところ異腹の兄君でいらっしゃるのですが、何だか奇妙なことです。


「お呼びですか。」

ひょっこりといらっしゃった院を、皇太后様は呆れ顔でご覧になります。

「年頃の姫がいらっしゃる所にまで、このように…」

姫宮は、ただにこにことするだけです。


「ほう、お二人ともよく似合っていらっしゃる。
春らしくて良いですね。」

「お兄様も、桜色なのですね。
三人で桜色なんて何だか可笑しいですわ。」

「いっそ女房達も皆桜色を着させましょうか?」

「まあ嫌だ。
院の御所は、春の暖かさにあてられて浮かれているようだなどと言われてしまいますわ。」


三人とも穏やかにお笑いになって、幸せを絵に描いたような春の日です。





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