平安物語=短編集=【完】



暑い暑い、夏の盛り。

院は釣殿にお出ましになって、訪ねていらした公達と談笑なさいます。
中でも、御身分も御容姿も格別な右大将様の素晴らしさが目立ちます。


「本当に、この暑さでは参ってしまう。
何とかならないものか。」

お召し物の紐など緩められて、扇で扇ぎながらおっしゃいます。

すると右大将様が従者に目配せなさって何かを持って来させました。


「少しでも暑さしのぎになりましょう。」

そう差し上げたのは、青々とした葉で飾り付けられた、桶に入った氷です。

「これは、珍しいものを。」

保存の困難な氷は、本当に財力のある人も少ししか夏まで持っていられません。

それを献上されて、院もにっこりなさいました。



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