平安物語=短編集=【完】
「姫宮の御結婚についてどう考えていらっしゃるのですか。
聖仁に入内させるのも、一つの手でしょう。」
お二人で御帳台にお入りになってから、院が切り出されました。
「女の浅知恵でお恥ずかしいですが…
私は、姫宮には宮仕えはおさせしなくないと考えております。
かと言いましても、独身のままでいらっしゃるのも先々心配なことです。
どなたかそれなりの御身分で、末永く姫宮を誠実に愛してくれる方がいれば…」
「宮仕えはさせたくないとは、耳が痛いお言葉ですね。」
院が苦笑して仰いますと、皇太后様はほんのりと頬を染められました。
「いえ…私は幸せですけれど。
聖仁には立派な女御様がもういらっしゃるではありませんか。
そのような所に乗り込んで行っても、穏やかには過ごせませんでしょう。
やはり、臣下に降嫁あそばした方が…」
「そうですね…
女一の宮も女二の宮も、それなりの結婚が出来て本当に良かった。
全く、女の子の身の振りようには苦心させられますよ。」
優しく皇太后様の髪を指で梳きながら仰いますと、皇太后様は気持ちよさそうにトロンとなさいます。
「もうお休みなさい。
珍しくお酒を召し上がっていましたから、眠たいでしょう。」
数回ゆっくりとまばたきをして、皇太后様は院の腕の中で夢の世界に墜ちてゆかれました。
「…おやすみ、静。」