平安物語=短編集=【完】
その三年後、帝が譲位あそばして、晴れて東宮様が帝位につかれました。
そしてすぐに、二の宮が東宮になられました。
にわかに起こるのは、中宮は誰かという推測合戦です。
候補は、太政大臣の娘である私か、東宮の母君となった御息所の二名でした。
私の心の中には負けてたまるかという激情が渦巻いていたのですが、あくまで表面上はおっとりと、「そんなに噂ばかりし合って、見苦しいわ。」と女房をたしなめるようにしていましたが、本当は女房達の噂話に耳を立てていたのでした。