人形と歯車
「…なにかカバンから」



スポーツバックから何かを取り出した。



暗さのせいでハッキリと見えない。



「見えないね」



「なんだと思う?」



「ネコ以外ならなんでもいいかも」



うんざりそうに中井が答える。



犬なら、と須藤ならいいそうだ。



「丸いものだな…」



両手の中にすっぽりとおさまるものだった。


そっと供え物をするように校門に置いた。



「花じゃないか?」



「久家って知らないんだけどそんなやつなの?」



「ぼくも知らないな。こないだ書道のコンクールで入賞したか何かでひょうしょうされていたくらいしか」



「いつよ?」



「前の全校集会だよ」


「あったっけ?」



佐藤は久家の様子をうかがう。モノを置いてからとつぜん走り出した。



「須藤」



電話でさけんだ、と同時にかげから須藤が飛び出した。



ガバッとかぶさる。



受話器越しに何か話している声が聞こえた。その背後からはおびえるようにごめんなさい、と。



中井と目が合った。



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