花火
夢で見た莉那の言葉だけが、やけに現実味を帯びて響きだした。
「だめじゃない、はるかさんをなかしたら」棒読みで口にすると、何か得体の知れぬ不安にかられ、春香に電話をかけた。コール音は十回なり十五回なり、留守電に切り替わった。もしかしたら今週も…。あのおぞましい結末が、音もなく近づいてくるのを感じた。それと同時に、幾らなんでもそれはないだろう、とも思った。三度目の正直というではないか。逆に、二度あることは三度ある、ともいう。このことわざのどちらを信じればいいのか、少なくとも、今は三度目の正直を信じたかった。
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