花火
高飛車なくせに、時に純粋無垢なまでに素直になる。
「過ぎた話はもういいよ。で、何で今日は会いになんか来たの?」
もっとも気になっていたことを、ストレートに口にした。
「愛する人の誕生日を祝いたかった、それだけよ」
胸に大きく、鋭い刃物が突き刺さった。愛するべき人が、この世に生を受けた日を祝いたい。そう思ってくれる人がいるだけで、この世に生まれてきたことに、素晴らしい意味を見いだせた。それなのに、春香は…春香は。込み上げる感情に、涙腺はまた緩んできた。その感情には、悲しみに悔しさ、情けなさに怒りなど、様々な感情が複雑に絡み合っていた。
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