花火
この一ヶ月間、春香のことを考えたことはなかった。だが、思いださない日もなかった。ふとした時に彼女の顔が浮かび、何してるんだろう、そう思い、その直後には頭を大きく振り、他のことを考えた。貴美のことを考えた。貴美のことを思った。お陰で一ヶ月前に比べれば、そうすることも減ってきていた。頭の中心にあった彼女の存在は、徐々に徐々にではあるが、確実に過去へと溶け込んでいった。それなのに、なんで今更…。しかもなんだ、この胸の落ち着きのなさは。予想外の相手からの電話にビックリしたから、それだけではない。だからこそやり切れなかった。一度は冷めた思いが、再び熱をおび、大きな空洞だけを残した胸の中心には、懐かしい痛みが蘇ってきた。
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