花火
「そうでしたか。ここら辺の船溜まりで、他に吉田という名字の家を、ご存じないですか?」
内心であのねずみ男を恨んだ。所詮ねずみ男はねずみ男だったか。だがタダで終わらす訳にもいかない。
「小さい町だからね、いれば分かるけど、ここら辺は家だけだよ。あんたの探してる吉田さんも、船溜まりの周辺に住んでいるんかい?」
はい、小さく答えた。
「なら高須船溜や新町船溜、牛込船溜を探してみな」
田舎の人とはみんなそうなのか、危害がないと分かると、急に親切に振舞ってくれた。佐久平の人々もそうだったな。
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