花火
あの日一日、結局体調が回復することはなかった。そして今、生まれ故郷の木更津市、袖ヶ浦駅へ向かう列車を待っていた。たっくんも長野の実家に帰るって、言ってたな。久々の連休を実家でゆっくりと過ごせば、きっと体調もよくなるだろう。そして来週には、笑ってたっくんと会える。またあの幸せな日々が戻ってくる。今は少し辛抱する時期なのだ。
一時間程で袖ヶ浦の駅に着いた。早速懐かしい香りが漂ってきた。駅をでると、すでにお母さんが車で迎えに来てくれていた。その車に向かいゆっくりと歩いていくと、お母さんも私に気づいた様だった。懐かしい笑顔を見せるが、その笑顔は一秒と持たなかった。その表情は途端に曇り、シートベルトをはずし、勢いよくドアが開いた。
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