花火
「紹介状を書かせていただきますので、明日にでもこちらの病院に行き、検査を受けてみてください」
小さな町の診療所では、手に負えないということだ。心の隅では分かっていたことだった。良からぬ予想が的中しただけだ。だがそれは、漠然とした予感から、その道の専門家に告げられた現実として、更に大きな影となり心を塞いでいった。こんなことになるなら、帰ってくるんじゃなかった。何も知らずに、たっくんの胸に飛び込んでいればよかった。
「ごめんね、なんか帰ってくるなり慌ただしいことになっちゃって。それよりお墓参りまだでしょ?ご先祖様が、首を長くして待ってるはずよ」
緊張した面持ちの両親を安心させるためにも、恐怖を押し隠して振舞った。そんな私の気を察したのか、お父さんは昼飯も食べてない、とか、一度家に帰り線香や花を取って来ないとだ、などと捲し立てた。
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