花火
「大丈夫、心配することはない。元気になったら久々に、家族三人で家族旅行にでもいこう。熱海で温泉はどうだ?北海道がいいか?でもこれからの時期だと、北海道はすぐに寒くなってしまうから、グアムなどの南国の島はどうだ?」
左手をしっかりと握りながら、しきりに話しかけてきた。その手の平は汗ばんでいた。誰もが不安の渦中で喘いでいる様だった。今週も、たっくんに会えないかもしれない。でもこの状況を伝えることは出来ない、どんな言い訳をしよう。会いたいよ、たっくん。幸せだった日々が、たった数週間前までの出来事が、音もなく遠ざかり、すでに手の届かない場所に行ってしまったかの様だった。
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