花火
『千葉の方に引っ越そうと思ってる。そうすれば、金曜日の夜には会いに行けるし、日曜日も遅くまで一緒にいられる』
思いつきでメールを打ち、そのまま送信してしまった。だが悪くない案だと思った。通勤は少しきつくなるが、一時間も二時間も長くなる訳ではない。せいぜい三十分程度だろう。次に気になったことは、引っ越しにかかる敷金や礼金だった。だがこれもさほど心配ない、結局使い道のなかった夏のボーナスが残っていた。後は条件のあう家を探すだけだ。だが悠長に探している時間もない、こればかりは少々骨が折れそうだ。一度踏ん切りをつけてしまえば、後は進むだけだ。例えその先にある物が、歓喜や幸福とは無縁な物だとしても。
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