花火
「いらっしゃいませ。お部屋をお探しでしょうか?」
テレビで見慣れた制服を着た、二十代後半と思える女性が、明るく対応してくれた。はい、と答えると、席に着く様に促され、おずおずと席に着いた。
「お探しの条件はございますか?」
浮かべられた笑顔は、静止画の様に微動だにしなかった。
「え~っと、家賃6万円位で、駅から徒歩五分から十分以内のところです」
最低限この条件に当てはまっていればいいとしか思っていなかったので、その後に間取りやら、トイレと風呂は別がいいか、フローリングと和室はどちらがいいか、角部屋がいいか、音は気にならないか、築年数は何年前までなら大丈夫か、敷金礼金は何ヶ月分までなら払えるか、などなどを聞かれている内に、自分がいかに何も考えずに行動していたのかを思い知らされた。
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