花火
また門前払いを受けることを覚悟していたので、正に寝耳に水の事態だった。しかも父親までいるなんて…。玄関を過ぎ、十畳程の居間に通されると、そこにはソファーに座り、じっとこちらを見つめる五十代半ばの男性が座っていた。ところどころに白髪の目立ち始めた頭髪に、眼鏡の奥からの鋭い視線、それとは対照に少しこけた頬が、様々な苦労を物語っていた。鋭い眼差しは、下から上まで見定める様なものではなかったが、心の奥を覗き込む様な視線だった。思わず生唾を飲み、焦って挨拶をした。
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