花火
「春香、お前は何て言うか分からないけど、俺はやっぱり傍にいるよ。ご両親からの許しも得たんだ。一日でも長く一緒にいれるように、これからは俺と春香と、お父さんとお母さん四人で、頑張っていこう」
握りしめていた掌が、微かに震えた。
「たっ、くん?」
小さく微笑む。
「来年も、二人で花火行くんだよ」
夢を見ているのだろう。何の夢かはすぐに分かった。
「あぁっ、約束したもんな。もう二度と約束破るなよ。夢だと思ってたなんて、言い訳させねぇからな」
春香は再び目を閉じてしまった。その寝顔には、優しい笑みが浮かんでいた。こんな表情を見るのは何ヶ月ぶりだろう?もっとその笑顔を眺めていたかったが、視界が歪んでそれを邪魔した。拭っても、拭っても、視界はなかなか晴れなかった。

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