花火
「ごめんね、お父さんベロンベロンに酔っちゃって」
あの後、更にビールの瓶を二本開けた春香のお父さんは、今はソファーの上でゆっくりと寝息を立てていた。
「いいお父さんで羨ましいよ」
夕暮れの太平洋に、静かに日は沈んで行った。
「たっくん、いつでも疲れたら逃げ出していいんだからね」
夕陽の光で、三色に輝く瞳が呟いた。
『バカ野郎、ふざけんな、人を馬鹿にするな』いくつかの言葉が浮かんだが、結局口にすることはなかった。黙って肩を抱きよせ、その額を胸に沈めた。
「もう暫く、ここは私の特等席だね」
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