花火
「おかえり、たっくん」
後部座席から、春香が目隠しをしてきたのだ。
「ビックリしたな!お前、大丈夫なんかよ?」
その手をゆっくりと解きながら振り向いた。
「家で待ってなさいと言ったんですけど、きかなくて」
「たっくん疲れてるのに、お母さんと二人で気を使わせたくなかったの」
照れ隠しなのか、頬を膨らませそっぽを向く振りをした。元気そうで良かった。
夕飯をいただき、風呂からでると、二階の春香の部屋のベッドの横には、客布団が敷かれていた。さすがにこれは不味いと思い、客室か、空いてなければリビングで寝ると言い張ったのだが、「いんですよ、隣の部屋では私たちも眠ってますし」そう言って両親は譲らなかった。そういう問題ではないと言うと、「ではどんな問題が?」そう言われると返す言葉もなく、渋々承知するしかなかった。
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