花火
空が夜に飲み込まれていく。昼の残り香の水色に、太陽のオレンジ、そして夜の濃紺が混じり合い、何とも言えないグラデーションを作り出している。こんな光景が何万年、何億年と繰り返されてきたのだろう、それでもこの美しさは普遍の物として存在している。そんな世界に浸っていると、一瞬一瞬に繰り広げられる、人工的な夜空が広がり始めた。
「綺麗だな」
返事はなかった。きっとこの光景に見とれているのだろう。無理もない、この光景を目の前にしたら、誰もが言葉を失ってしまうのだから。
一分間に千発というオープニングの花火が打ち上げられ、辺りからは歓喜の声が飛び交っていた。その興奮冷めやらぬままに、夜空には次々と大輪の花が咲いていった。
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