花火
「たっくんは、どんな場所で育ったの?」
「俺は長野の佐久平っていう、四方山に囲まれた田舎町。同じく駅の周りも、家の周りも、畑と田んぼと山ばっかり。取り柄と言えば、新幹線が止まることくらいかな」
おどけて言うと春香は「行ってみたいな」そう呟いた。顔を半分以上隠してしまった夕日に、ほのかに照らされたその横顔は、どこか切なく、どこか弱弱しかった。
また胸が一つ高鳴った。今までに感じたことのない鼓動。そしてそれがどんな意味を持っているのかも、その時は分からなかった。
< 53 / 427 >

この作品をシェア

pagetop