花火
「いいや、地元から新幹線を使っても二時間位かかるとこだったから、一度しかないんだけどね。それも大分昔の話で、小学校の上級生くらいの時だったかな、家族で泊まりがけで見に行った一度きり。幼心にも綺麗だな、って感動したのを覚えてるよ」
こんな昔話をしだすなんて、少々酔いが回ってきた様だ。
「少しづつだけど、たっくんのこと知ってきたな、そう思ってたけど、昔の思い出とか、まだまだ知らないことは沢山あるんだよね」
「それはお互い様だろ?これからゆっくり、沢山知って行けばいいんだよ」
うまく励ましたつもりだったが、春香はただ、寂しそうに頷くだけだった。

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