花火
二人で過ごす三時間あまりはたちまちに過ぎ、太陽はお役御免とばかりに西の空に沈んで行った。空は夜の情景を作り始め、辺りには更に人が増えていった。河川敷は見渡す限りにシートが敷かれ、土手の上には、場所を求める人々が行列を作っていた。反対側の岸も同じ様な光景が続き、いったい何十万人、何百万人の人々がいるのだろう。時間は七時を目の前にし、辺りの期待は自然と高まっていった。するとそんな期待に答えるかのように、河川敷に設けられたPAセットからアナウンスが流れ始めた。
『みな様、大変長らくお待たせ致しました。これより、第29回江戸川区花火大会を開催します』
『みな様、大変長らくお待たせ致しました。これより、第29回江戸川区花火大会を開催します』