花火
駅に向かう行列はすでに長蛇の列を作り、駅に近づくにつれその列は大きく拡大していった。そしてそれはやがて、一歩進むのも苦労する程に膨れ上がっていった。
「最後は本当に凄かったな」
呟くように、自然と発していた。
「うん、でもアッと言う間だったね。何か短い夢でも見てたみたい」
随分昔のことを思い出しているように、遠くを見つめて答えた春香。
「短い夢か、確かにそんな気がするね。で、今はその夢の中から無理矢理現実の世界に引き戻された感じ」
出てきた声は、自分でも驚く程に力なかった。
「だからそんな寂しそうな顔してるんだ?たっくん」
自分だって、十分寂しそうな顔をしてるじゃないか。少しだけ元気を振り絞り指摘した。
< 90 / 427 >

この作品をシェア

pagetop