花火

「たっくん、良かったら、家来る？」
一瞬何を言われたのか理解出来なかった。
「ほら、家までなら三十分もかからないし、たっくんが終電なくなっちゃったら大変だし」
慌てて付け足す春香に、ようやく事態を把握した。
「でも、いいの？」
心臓はこれでもかとばかりに大きな音を立てて暴れだした。それでも、なぜか奇妙なまでに頭の中は落ち着いていた。予想だにしない事態ではあったが、初めての経験という訳でもない。自分の中の雄が、本能的に落ち着かせていたのだろう。