神威異伝




……代わり映えのしない山の中を歩く十夜の耳に、ある音が聞こえた。


「…………ん?」


あまりにも小さいその音に、耳をすませた十夜の足は自然に止まる。

それに伴い、少し先を歩いていた日向と理緒の足も止まった。


日向が、十夜に声をかける。


「十夜、どうしたんだ?」
「……何か、音が聞こえねぇか?」


辺りをきょろきょろ見渡しながら、十夜が言った。


「音?」


十夜の言葉を繰り返し呟き、理緒は目を瞑り耳をすませた。

だが、理緒には風が木々を静かに揺らす音しか聞こえない。



「……別に、何も聞こえないけど?」
「俺もだ。……風の音ぐらいしか聞こえないな」


理緒と同じ事をした日向も、特に変わった音を聞こえなかった。


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