神威異伝
「んー……でも、今も聞こえんだけどな」
腕を組んで唸る十夜に、理緒が言った。
「そんな事より、早く進まなきゃ。今日中に白山から抜けるつもりなんだからね?」
地図を手に持ったまま歩いていた日向も、理緒に同意する。
「そうだぞ、十夜。ほら早く行こう」
「わーってるよ」
十夜は理緒と日向に言われ、渋々歩き出した。
理緒と日向も、そんな十夜を見て歩き出す。
…………だが、十夜の言葉が正しかったという事を、日向と理緒は認めざるをえなくなった。
ある程度の距離を歩くと、日向と理緒の耳にも、風の音とは明らかに違う音が聞こえるようになったからである。
「……これって、水の音?」
理緒がぽつりと呟いた。
小さくだが、はっきりと日向が頷く。
「あぁ、近くに川でもあるんだろう……地図には載ってないんだけどなぁ」
地図を広げ、首を傾げる日向。