恋愛スキル
「ねー郁斗。何だか懐かしいわね。前は良くこうして出掛けてた。人けがない道でキスをしたり……あの時の事覚えてる?」
淘子の甘い匂いが嫌でも鼻につく。
「さぁな。過去は過去だ。少なくとも俺にとってはな」
俺の答えに彼女が"そう"と呟くのと同時に、淘子のマンションの前に到着した。
「じゃ、傘ありがとな」
俺は彼女に傘を返すと、近くのコンビニまで走り出す。
「待って!……お昼、食べて行かない?」
淘子の呼びかけに、俺は手を軽く挙げ断ると、雨の中を一目散に駆け抜ける。
この雨が、甘い匂いを洗い流してくれる……。
淘子から解放されたような……
そんな気がした。