着せ替え人形
「君からそんな風に言われるとは思ってなかったな…
でも俺は、決して奈津子のこと美化して撮ろうなんてしてないけど。
今まで撮った写真は、俺から見た奈津子そのものだよ。
ただ…商売だから派手に着飾ってもらってるだけの話。
でも奈津子がそんな風に思ってくれるなら…自然体の奈津子を隣で取り続けたいな」
…あれ、今さりげなくすごいこと言われなかった。
涙を拭いて一ノ瀬さんの顔をまじまじと見た。
「何か変なこと言ったかな…?」
少し居心地が悪そうに彼が言った。
「いや…ただ、そんな思わせ振りなこと言われたら調子に乗りますよ?」
「乗ってもいいんじゃない?」
どれだけこの人はあたしの鼓動を高鳴らせたら気が済むんだろう。
もう…我慢できないや。
「一ノ瀬さん…好きです。
写真を撮るときの真剣な顔も、手を出すのは早いくせに仕事熱心なとこも、たまに見せる子供みたいな笑顔も大好きです。
もう言葉にしないとあたし、おかしくなりそうで…」
とうとう言ってしまった…
もうどうにでもなればいいのよ。