△の○
大学の敷地内で、アヤちゃんをみかけることはたまにあった。
昼休みとか、移動中の廊下で会うこともしばしば。
でも俺とは一切目も合わさないし、なんなら俺をみつけるとくるりと方向を変えて立ち去ってしまう。
嫌われているのは知っているから、仕方ないとは思う。
そうじゃなくて、俺が気になるのは、
必ずといっていいほど、彼女が一人であることだった。
友達がいないのだろうか。
一人の方が好きなんだろうか。
・・・そんなことってあるのだろうか。
知ってか知らずか眉間に皺を寄せて足早に歩く彼女は、まるで何かから逃げているように見えた。
ここから、すぐ離れなくては。
どこか、ここではない場所へ。
皆のいない、どこかへ。
今にも走りに変わりそうな早歩きで、彼女は人の間をすり抜けていく。
毛穴の一個一個から怒りを滲ませながら。
ハリネズミみたいに、全身をトゲで守っている女の子。
でも、その姿に、俺はどうしても孤独を感じてならなった。