放浪者の恋-single planet-
1. single planet 恋におちる
あたしの涙腺と、身体は、おかしくなってしまったんじゃないかと思った。

すこしでも身動きしようものなら、
心臓のおくのあたりから、なにかが溢れ出してしまうそうに感じる。

違う色の空に気づいては、涙がこぼれそうなほど顔が熱くなり、だれかに、今日の空は素敵な色をしている、って教えたくなってしまう。

身体にうけとめる、風が運ぶ、春の予感のする香りのすべてに感動している。

ある日、そんな恋の訪れにおののいたわたしは、《占い稼業》をやっている友人がいたのを急に思い出し、電話をかけてみた。

「ただいま、電話にでることができません…」

3回の留守電アナウンスののちにあきらめて、名前だけのメッセージを残し、電話を切った。


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