放浪者の恋-single planet-
2.single planet 家族のはなし

おとつい、ついに30歳 になった。

友達は、どんどん結婚し、どんどん子供を産んでいる。
年をとってひとりでいることに対する怖さはあまりない。
将来の不安も、するだけ無駄だと思う。
家族関係は、試練の場所だ。


私の家族は、俗にいう、《離散》状態だった。

家族それぞれが、それぞれを見つめることなく、ばらばらの方向を向いている。
労り?ってなんだったけ、と思う。

そのなかで、唯一、なんとなく全体をとりまとめ、黙々と仕事をしていたのは、祖父だろうか。

母が離婚して出奔したあとの、祖母のぐちを慰め、アルツハイマーの面倒を見て、わたしたち孫の世話をしたのも祖父だった。

そんな祖父が、亡くなったのは昨年7月のこと。

姉から知らせの電話がかかってきたその時、ちょうど具合がわるくて、自宅で居眠りをしていたわたしは、だれかにふんわり抱きつかれたような身体の重みを感じ、目をさました。

「じいちゃんが、死んだんだって」
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