ピンチヒッター
え?

平然と言う正太に返す言葉を失ってしまった

「いくら練習しても結果が出なかっただろ?
自分に限界を感じてたんだ」

「で、でも、甲子園に連れて行くって・・・・・・」

「あれは強がりだよ」

正太は優しく笑った

「うそ・・・・・・」

「あの約束が・・・・・・心の支えだったんだ。
何度も諦めそうになった俺を、
真季との約束が繋ぎ止めてくれた」

「どうして言ってくれなかったの?
あたしそんなの全然知らなかった」

「言えるわけないだろ。
真季の前では・・・・・・
頑張ってる俺でいたかったんだ」

「そんな・・・・・・」

「真季には・・・・・・
頑張ってる俺を応援し続けて欲しかったんだ」

そんなの・・・・・・

ずるいよ

「そんな顔するなよ。
お前にはホント、感謝してるんだ」

正太はあたしの頬を伝う液体を拭ってくれた

あたし、泣いてる・・・・・・

「今もまだ野球ができるのは、
お前のおかげなんだ。

今日のホームランだって、
お前のおかげなんだ。

だから・・・・・・だから、
改めて言わせてくれ」



「真季を甲子園に連れて行く」

「うん、行けるといいね」

あたしは精一杯の笑顔を作った



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