うしろの猫
「・・・1匹よ・・・」



「えっ?」

「1匹?1匹なの?」

「本当に1匹なの?」

評し抜けたように、少女に確認する3人。


黙ってうなずく少女を見て、大声で笑い出す3人。その表情は安堵に包まれている。


「笑える!猫1匹だって!」


「1匹だけだと、わたしら殺せないじゃん」


「まぁ、しょうがないんじゃない?わたしら、いじめているの早智子だけだしぃ」

「ちょっと、早智子はあたしらの友達だよ。いじめてなんかいないしぃ」


安堵したように高笑いをする3人を、ただ静かに見つめていた少女の視線が変わっていく、その視線には怒りと憎しみがこもっている。



彼女の視線に気づいた3人は、少女の視線の圧力を避けるように屋上の扉を開けて出て行こうとする。


少女は、3人を睨み続けている。



「ちっ!なんだよアイツは。嫌な目で見やがって!」

リーダー各の子が、履き捨てるように言う。

「もういいよ!あんなのに関わらなくて」

「そうそう、どうせアイツは夏休みに帰ってきてるだけなんだから、すぐ消えるよ」

リーダー各の子は、2人にそう言われても釈然としなかった?

自分は、それなりに喧嘩慣れしているのに、何故かアイツに睨まれると畏縮してしまうのだ?たいして強そうでも無い自分と同じ年のただの少女に?

・・・あの目・・・

・・・あの目は、まるで獣だ・・・


屋上に残る彼女を、リーダー各の子は睨みつけながら出て行こうとしたが、彼女と視線が合うと慌てて目を避けてしまった。その表情は本人も気づいていないが、怯えていたのである。

「くそ!いまいましい。」


屋上を降りる階段の途中で、悔しそうなリーダー各の子をなだめるように、2人が言う。

「まぁまぁ、不愉快な思いは早智子にぶつければいいじゃないの」


「そうそう、そのための早智子じゃん」




屋上の扉の前で立ち、階段を降りていく3人を冷たい視線で見つめながら彼女がつぶやく。


・・・バカな、人たち・・・
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